栃木県と中国の青少年交流を盛り上げていくー栃木県青少年浙江省訪問団による福田富一知事表敬訪問
みなさんは、お隣の国『中国と栃木県のつながり』について知っていますか?
中国と栃木県は、実は今日まで様々な形で交流を続けており、学術・芸術・就業などあらゆる側面で友好的な関係を築いてきました。
しかし、世界的なパンデミックの影響で中国との交流が以前より減り、中国と栃木県の友好関係は特に若い世代の記憶から薄れていってしまう危機にありました。
そこで、2024年2月24日~28日の5日間、『栃木県日中友好協会』により中国・浙江省へ、栃木県の学生を連れた訪問が行われました!今回の訪中は、現地の対外友好機関や大学、中学校などの学校法人との交流、また歴史的な観光地を巡ることにより中国に関する見識を深めることが目的とされ、“帰国後、栃木県の若者が日中友好に携わっていくきっかけづくり”を展望に行われました。
訪問団のメンバーは、白石雄治理事長、瀧澤正幸理事、成田金城理事、有賀りち子理事、襲田淑理事の協会員5名と、石川眞矢さん、高橋愛さん、苫米地美空さん、安藤美海さん、成田博煕さん、高橋佑佳さん、酒巻大雅の学生7名の計12名です。
主な訪問先は、浙江省対外友好協会、浙江大学日本語学部、杭州市第13中学校、之江文化センター、紹興市対外友好協会。中国現地のみなさまは栃木県からの訪中を快く受け入れてくださいました!
訪問先では、栃木県と浙江省のこれからの末永い友好の実現を願って、中国現地の方々と中国語でコミュニケーションを取ったり、歴史的な名勝地を訪れて中国文化の学習したり。ガイドを務めてくれた柳先生や浙江大学の学生さんたちは、非常に流暢な日本語と深い日本文化への理解を示してくださいました。
そして3月22日、栃木県県庁にて福田富一県知事にお時間をいただき、今回の訪中の成果を報告するため、浙江省に訪問した協会員と学生の計12名が表敬訪問を行いました。
表敬訪問では、訪中団団長である白石雄治理事長はじめ、訪中に参加した学生たちによる県知事への報告と日中友好に関する今後の展望の共有を行いました。
これまで栃木県における日中友好関係維持を担ってきた栃木県日中友好協会。これまでの活動や掲げてきた理念を振り返り、これから若者の交流を促進していくために熱心に動かれている協会員のみなさまよりお話いただきましたので、こちらの記事にまとめさせていただきました。
栃木県日中友好協会による日中友好の概要
『栃木県日中友好協会』は、東京に全国本部を置く日中友好協会の栃木県本部です。日中共同声明よりも以前(1972年2月)に前身を構えた歴史ある協会です。設立後文化大革命や戦争などを乗り越え、「日中友好における架け橋」として不断の努力を続けてきました。
1978年から「日中友好栃木県民の翼」による第一回訪中が実施され、今回の私たちによる浙江省訪問のように、上海や杭州の対外機関に訪れたそうです。それから「県民の翼」による訪中は81年に第二回、83年に第三回、86年に第四回が実施されました。
その後1987年から「青年の船」訪中団の浙江省派遣が開始されました。そのほか、88年には「浙江省文化芸術団」が宇都宮や黒磯に訪問・講演したり、95年には日本の国民文化祭に「杭州雑技芸術団」が参加したりするなど、栃木県は浙江省とかなり活発な交流の歴史を有しています。
今日では、「県民の翼」や「青年の船」の訪中団は中止され、コロナウイルス流行や中国側による「ゼロコロナ政策」などの状況により久しく訪中団を派遣できていませんでした。
しかし、今年度は栃木県と浙江省の友好提携30周年を迎え、コロナウイルスに関わる各種規制も緩和されてきているため、史上初である地域の学生を伴った訪中が実現されました。
栃木県日中友好協会 会長、理事長からのお話
あしかもメディアライターの酒巻です。今回の訪中と栃木におけるこれからの日中友好について、栃木県日中友好協会のみなさんに色々なお話を聞いてみましょう!
高橋文吉 会長
私の名刺、君にあげるよ。お見合い用だけど(笑)
ありがとうございます!(気さくな方だなぁ…)
日中国交正常化30周年である2002年、満場一致で同協会理事長に選出された高橋文吉会長は、2012年から会長を務めています。ほかに、とちぎ自民党顧問や栃木県インディアカ協会会長(令和5年にご退任)を務めるなど、栃木県内各組織の要人として活躍されています。
高橋会長が同協会会長に就任された2012年は、中国語講座新クラス開設、中国スケッチ画展、浙江省雲和県からの来日団、浙江工商大学インターン受け入れなど様々な事業が行われた一年でした。就任直後から多方面の事業に関わってきた高橋会長に、お話を伺います。
今年は栃木県と浙江省の友好が30周年を迎えたということで、おめでとうございます。
そうだね、今回の訪中もその記念としてとても素晴らしいものだったよ。でも、忘れちゃいけないことが一つある。
忘れちゃいけないこと、とは?
それは、日中友好のきれいな側面だけを見ないことだよ。
高橋会長は、共産主義である中国との政治的なやり取りや、中国にとって日本は土地が買いやすいことなど、様々な問題について語ってくださいました。それを踏まえた上で、今後の日中友好にどういった姿勢をもって取り組まなければいけないかを教えてくださいます。
そうですね、現実的な問題にも目を向けるべきですね。
農耕社会の日本にはどんな物事も二分法で考える文化があるんだよ。でも、今の日本人はそれを忘れてしまっている。
二分法で考える…例えばどういうことですか?
例えば、はいかいいえか、男性か女性か、赤字か黒字か、とかね。
二分法の考え方を日中友好においても用いるんですね。
つまり日中友好においても、善か悪かの分別をはっきり持って臨まないといけないんだ。曖昧な返答や泣き寝入りすることは、日中友好とは逆の成果を出してしまうよ。
今回の訪中は、充実した訪問プラン、通訳付きの周遊、豪華な食事、日本に友好的な方々との交流でいっぱいだったね。でも、そうした美しい訪中の反対側には常に現実的な日中問題がある。善だけ見て悪を見ないふりして日中友好の理想だけを語るのもまた問題だよ。
白石雄治 理事長
白石環境株式会社代表取締役の白石雄治理事長は、今から約12年前の2012年から栃木県日中友好協会の理事長を務めています。今回の訪中では、訪中団の団長として引率されました。
幼い頃から蝶が大好きな白石理事長は、蝶の収集のためにフィリピン、マレーシア、タイなど世界30ヵ国を旅してまわったそうです。蝶の収集のほか、英語に堪能だったり、旅の中でスペイン語をマスターしたり、フランス語の図鑑の翻訳を引き受けたことがあったりと、様々な外国語や外国文化に精通していらっしゃいます。
白石理事長、今回の訪中はいかがでしたか?
中国側のきめ細やかで盛大なおもてなしに感動したよね。
理事長はこれまで何度か訪中をされていますね。
うん、でも今回は今までで一番豪華だったと思うよ。毎日普段じゃありえない高級なご馳走をいただけたし、どのテーブルに行っても自分たちの名前付きできちんと用意されてた。
私たちを歓迎しようとする温かい雰囲気に、私も感動しました。
おもてなしの国である日本を超えてくるよね。素晴らしかった!
中国側の日中友好に対する姿勢と、手厚いおもてなしに非常に感動した白石理事長。今回の訪中と表敬訪問を踏まえて、今後の栃木日中友好協会の在り方について語ってくださいました。
政治的なあれこれがあるからと言って、お互いに肩肘張ってちゃダメなんだ。互いを受け入れ合って、Win-Winな関係を築いていきたいよね。
お互い仲良し!これに越したことはありませんよね。
でも現実問題として、栃木県として栃木県日中友好協会に充てている予算は昔より少なくなっているんだ。
それでは活動費の捻出も難しくなっているんですね。
今回の表敬訪問は「我々の存在を県知事にアピールして、県からもご支援いただけるようにする」という意味もあったんだよ。
コロナウイルスの流行に伴う中国側の規制、そしてそれによる協会の制限されてしまった活動は、栃木県と浙江省の友好事業をかなり小さくしてしまったそうです。しかし今回は久しぶりの訪中、かつ栃木のエネルギッシュな青少年と共に中国に訪れることができて、会長や理事長はじめ協会全体が新たな動きに期待を寄せています。
栃木日中友好協会の事業
お話いただいた高橋会長、白石理事長という素敵なお二方を代表にする栃木日中友好協会。現在はどのような事業を行っているのでしょうか?表敬訪問に出席された瀧澤理事と清水先生にお話を伺いました。
とちぎ福祉プラザで中国語講座
とちぎ福祉プラザにて中国語講座の講師をしていた瀧澤さん。地域の方々向けに中国語教室を開講することも栃木日中の事業の一つですが、パンデミックの時期を境に一旦休講することとなってしまいました。現在はコロナも大分収まってきたのですが、受講者がほとんど高齢者だったのと瀧澤さん自身が以前より忙しい身になってしまったので、現在も休講のままです。
クラスは習熟度別に分けられていて、入門、初級、中級と全部で三つありました。「久しぶりの訪中も達成できたことだし、これからまた開講できる機会があればいいな」と瀧澤さん。
再開したら、僕も瀧澤さんの中国語講座受けてみたいかも…
留学した酒巻くんだったらもっと専門的なところに通った方がいいんじゃないかな。
え~、なんでですか(笑)
うちの講座、実は時々、みんなでせんべい食べたり雑談したりしながらゆったりやってたからね(笑)
いいですね〜!僕もそういう雰囲気で中国について勉強したいな!
パンデミック以前は中国語講座以外にも様々な事業を展開していたそうです。新型コロナウイルスをきっかけに、それらも中止してしまっている現状です。これから栃木日中友好協会の取り組みが再開されて、日中友好の気運が高まっていくことを心から願います。
中国語スピーチコンテスト
栃木県日中友好協会が年に一度主催する中国語スピーチコンテストは、地域の高校生、大学生、社会人の中国語力の実践をターゲットに据えたものです。運営は栃木日中の事務局、金崎理事と清水先生が主に担当しています。協会側が用意する原稿を正しい発音で読む朗読部門と、参加者自らが原稿を作って発表するスピーチ部門の二つがあり、高校生の部、大学生の部、社会人の部に分けて表彰を行います。
新型コロナウイルス流行のため、一回だけ開催することができませんでした。そのため、七年前に始めたスピーチコンテストですが、今年度は第六回となります。栃木県のみなさまの積極的な参加を心待ちにしています。
去年酒巻さんにも出場お願いしたんですけど、フラれちゃいました…
ごめんなさい!留学予定だったので参加できませんでした…。今年こそはぜひ参加させていただきたいです!
こちらこそお願いします♩ところで、栃木県大会で優勝できても、その後の全国大会では残念ながら入賞を逃すことが多いですね。
中国語スピーチコンテストでは、11月ごろに開催される栃木県大会に上位入賞すると、1月の全国大会に出場することができます。全国大会になると、日本全国から中国語の堪能な高校生、大学生、社会人が飯田橋の日中友好会館に集まり、中国語スピーチで順位を争います。参加者はほとんどが中国への留学経験又はハイレベルな中国語の検定を有しており、入賞をすることがかなり困難な大会になっています。
でも、「とにかく全国大会の場に立つ!」ってことが大切だからね。
「人外有人、天外有天」(上には上がいる)ってこと!あきらめないで頑張ることが大切だよ。
たしかにそうですよね。じゃあ、今年は全国一位目指しちゃおうかな…!
加油吧!(頑張ってね!)
しかし、中国語スピーチコンテスト栃木県大会に参加する大学生はかなり少なくなっています。特にスピーチ部門では、参加した大学生が一人だけの年度もありました。今年度以降のコンテストでは、地域の大学生の積極的な参加を呼び掛けたいところです。
私も大学二年生の頃に、授業で中国語の先生から伝えてもらって初めて大会の存在を知ったんです。
インターネットで検索しても出てこないからね。スピーチコンテストの存在が学生間でもっと広まるといいな。
今回の訪中を企画してくださった成田金城理事
今回の訪中の提案・企画を担当されました。旅行会社に勤めていた経験と人脈を駆使して、今回だけでなくこれまでの訪中、訪日、海外企業とのやり取り、海外学校の視察などに携わってこられました。
栃木県と中国を結ぶ活動において、成田さんがまさに架け橋となっているのですね。
私はもともと中国にいたのですが、中国側からの訪日団に通訳として参加したとき、初めて栃木県を知ったんです。
そこから栃木県とはどのように関わっていったのですか?
宇都宮大学の教育学部に留学しました。それから宇都宮で就職して、以来栃木県で日中友好行事に携わっています。
この人は影の実力者みたいなもんだよ(笑)
瀧澤さんのおっしゃる通り、今回の訪中は成田金城理事の企画力により実現されたところが大きかったです。浙江省の対外友好機関には成田理事の元同僚や後輩にあたる方が多かったため、成田理事の今までの功績とお人柄が日中友好にかなり貢献しているのです。
いやいや(笑)実は宇都宮市以外にも、他の多くの市区町村の日中友好協会に会員として参加してます。
精力的に活動されているんですね!
でも私ももう60歳だから、日中友好にもそろそろ次の世代が欲しいですね。
今回、実は初めて訪中に学生を連れて行ったんですよ。私はこれまで何度も訪中団に加わりましたが、いずれも団員は議員さんなどの大人たちばかりでした。
そうだったんですか!コロナも徐々に落ち着いてきましたし、今回の訪中がターニングポイントになりそうですね。
そうですね。これから日中両国の青少年の交流を積極的に増やして、草の根から日中友好が実現できたらいいなと思っています。
今年以内にもう一度学生を連れた訪中を実現したいと語る成田理事。「次回は栃木県の学生30人ほどを募って中国を訪れ、中国語や中国文化の学習、日中の学生同士の交流を促進したい」とおっしゃっていました。
訪中団員(学生)の感想
今回の訪中に参加した7名の学生は、帰国後に感想レポートを提出しました。レポートは高橋会長、白石理事長はじめ協会理事各位に渡され、今回の表敬訪問で福田知事にも届きました。
中国に慣れている学生も初めて訪れる学生も、日本を心から歓迎する中国に終始喜んでいました。
そうした素晴らしい待遇を受けて、学生の中には「これから日中友好に少しでも貢献して、この訪中でいただいた恩を何らかの形で返したい」という方もいらっしゃいました。
学生7名の感想レポートは以下に添付しておきますので、興味のある方はぜひご一読ください!↓↓↓
栃木県日中友好協会のこれから
今回の表敬訪問で特に強調されたのは、栃木県日中友好協会における青年部設立の提案です。それは同協会の次世代育成と日中両国の青少年交流促進を目的としています。
日中友好協会は全国47都道府県にありながら、どの県においても青年部にあたるものは未だ存在していないと成田理事は指摘されます。中国都市と最も早く友好提携を結び、今年40周年を迎える静岡県の日中友好協会さえ青年部を設立していないそうです。
私たちは栃木県日中友好協会において、学生を主体とした青年部設立を全力で支援していくつもりです。
青年部が立ち上がったら、私もぜひ協力させていただきたいです!
ありがとう。青年部ができれば君たち若者の未来のためにもなるし、なにより私たちが助かるよ。
これからも栃木県の学生を巻き込んだ訪中を予定しています。栃木県にゆかりがあって中国に少しでも興味のある方を、これからどんどん集めようと考えています。
協会青年部設立がいち早く実現し、中国や日中友好に興味のある地域の若者を集めること。この目標が達成されれば、栃木県が日本全国の日中友好事業に新たな風を送り込むことになります。
設立された暁には、この記事を読んでくださったみなさまにもお力添えをお願いしたいと思います!